千葉市 勢い増すマグロやウナギの代替魚 

千葉市

本家よりおいしい? 勢い増すマグロやウナギの代替魚 スーパーも販売に力

パンガシウス、スマ、ヒタチダラ―。近年スーパーの魚売り場に見慣れない新魚種が次々と現れている。いずれもこれまでは資源量が減少しているウナギやマグロなどの代替として売り込んできた。ただ、味が良いことや成長が速いことなどからスーパーなどの量販店が積極的に採用。新たな市場を築きつつある。
特に近年存在感を放っている白身魚がパンガシウスだ。ナマズ目の魚で、日本が扱うパンガシウスはベトナムの養殖物が主力。安価で供給力ががあることから2010年ごろから量販店が積極的に扱うようになり、冷凍フィレーの輸入量は5年間で10倍に伸びた。癖が少ない身質が特徴。最近ではかば焼き商品も目立つようになった。
イオンなどの量販店が学名のパンガシウスを商品名に採用し、その名が定着したとみられる。パンガシウスの種類は大きく分けて「チャー」と「バサ」の2つ。近年は「早く育つチャーが主流になっている」(水産商社・メイプルフーズの戸恒徹司社長)という。
水産売り場には香辛料などで味付けした商品が並ぶことが多い。近年のウナギの価格高騰から、ウナギの代替品としてかば焼き加工したものも販売されるようになった。特に今年はシラスウナギの不漁に伴い値上げが懸念されるウナギの代替商材として「丑(うし)の日商戦に需要が高まるのでは」と戸恒社長。
パンガシウスは主にフィレー(3枚におろした状態)で輸出される。主要輸出相手国は中国、米国、欧州。特に中国から引き合いが強まっており、ベトナム水産輸出加工協会(VASEP)によると17年の養殖生産量は前年を3・5%上回り、過去最高の125万2011トンだった。
現地のパンガシウス販売会社の最大手はVINH HOAN(ビンホア)社。養殖場から加工場まで有する総合メーカーだ。ここでもかば焼きの生産ラインが増設されており、日本向け商品の開発に力を入れているのがうかがえる。

マグロに勝るとも劣らないスマの刺身(下)と成魚(写真提供・和歌山県)
マグロに引け取らぬ味わい サバ科の「スマ」
マグロに近い味わいを武器に売り込むのがスマ。スマは熱帯や亜熱帯の太平洋沿岸に広く分布するマグロと同じサバ科に属する魚。最大で体長1メートル、体重15キロにも育つ。養殖では2キロを超えると、脂がのり、味は養殖マグロにも勝るとも劣らないともいわれている。

養殖スマの種苗生産、成魚の出荷にいち早く乗り出したのは和歌山と愛媛の両県。和歌山は生産が盛んな養殖マダイのイケスを活用しようとして注目。愛媛は天然マグロ漁に混ざって獲れていたが、味が良いともあり養殖に取り組んだ。
現在、和歌山は1尾2キロ、愛媛は2・5キロで出荷。愛媛は「伊予の媛貴海(ひめたかみ)」とネーミングしている。両県ともに、養殖期間は約1年と短く、既存のマダイなどの養殖施設が代用できることもあり、養殖業者も熱視線を送る。
養殖スマが注目を集める理由には価格の面もある。現状スマの価格は希少性から国産の養殖クロマグロの価格を上回ることもある。17年度の出荷尾数は数千尾程度。和歌山、愛媛の両県で出荷が見られるものの、両県合わせた生産者数は5社以下と少ない。
生産量が伸び悩むのは稚魚の生存率が低いからだ。両県は人工ふ化した稚魚を開発。出荷までの生存率の向上を図るため、稚魚の出荷サイズアップと早期出荷に取り組んでいる。
店頭での販売は現在、和歌山、愛媛の両県ともに関東や関西の百貨店や飲食店、地元の飲食店など。スポット的に取り扱われ、主に刺身や寿司などで提供されている。

ヒタチダラは鍋商材として秋口から販売を強める
イオンリテール(千葉市、岡崎双一社長)は3月から、漁獲減が懸念される米国アラスカ産マダラに代わり、チリ産のヒタチダラ(学名=メルルーサ・オーストラリス)の販売を新たに始めている。
同社は「17年末からアラスカ産マダラの水揚げが悪化し、価格が上がっている」と説明。「マダラよりも漁獲量が安定しており、価格は2割ほど安い」(同社)とし、マダラに代わる商材として扱いを強化する。
本州と四国地方のイオン、イオンスタイル全400店舗で切り身商品を発売。3月のヒタチダラ売上高は600万円と「おおむね計画通り」(同)。8月に現地で漁が始まるため、秋口から鍋商材として販売をさらに強化する。
ヒタチダラはマダラの補完商材として扱う。切り身は100グラム当たり税込み159円で販売中。春夏はムニエル、秋冬は鍋商材として、季節ごとにメニュー提案を行う。
ヒタチダラはチリ南部のパタゴニア海域で漁獲。同種はスペインを中心に高級魚として知られ、ムニエルなどで親しまれている。